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田嶋宏行氏の逝去後

2011.08.07 世田谷大蔵工房にて
田嶋氏が1997年に亡くなった3年後の2000年に、利恵夫人によって作品72点が大英博物館へ寄贈された。 いづれもボナティエール(作家保存版)である。 大英博物館では保存の関係から科学的な分析も行われ、 一つの論文が出されている。 海外での目利きを評価した夫人の貢献であろう。また、2003年にはインデアナポリス美術館へ、国内では町田市立国際版画美術館、府中市立美術館、妙義山麓美術館、須坂版画美術館などにも寄贈された。
大英博物館への寄贈は、将来における田嶋版画の普遍的な価値を高める上でも意義があったと思われる。論文の冒頭に「芸術家の意図を含んでいるどんな実験的研究のものであっても、その成分と版画の詳細な部分を特定し、記録することは絶対必要である。」との一文に、この版画家の創造性を見出してくれる期待が高まる。田嶋版画は色合いがユニークで燃え立つような立体的な豊かさに特徴付けられる。版画にキラメキ広がる光の効果を出すために、水彩絵の具を採用する技術とそれに油彩絵具を重ね染める技術を開発した。と紹介しており、また、複合画材を実験的に用い、伝統的木版画技術の進歩に貢献した抽象表現主義の先駆的主導者とも言っている。表現力に創造性が
豊かなことから、後世に再現できる可能性は薄い。非常に価値がある作品だと思う。